1963.6. 松本駅 Photo by: Taro Satomi

昔、信濃の国と呼ばれた長野県は、多様な文化を擁する巨大な「合衆国」のよう

な地方である。地域総面積13.6万km2、日本の都道府県の中では北海道、

岩手県、福島県に次いで4番目に広く、南端の天龍村から北端に位置する野沢

温泉村までは200km以上もの距離がある。県境の延長は実に835kmに及び、

群馬(上野)・埼玉(武蔵)・山梨(甲斐)・静岡(駿河・遠江)・愛知(三河)・岐阜

(美濃・飛騨)富山(越中)・新潟(越後)と8県10国と接している。一口に信濃と

いっても歴史上、信濃がひとつの文化・政治でまとまったことはなく、江戸時代に

は北信に飯山・須坂・松代、東信に上田・小諸・岩村田・竜岡、中信に松本、

そして南信に高島・高遠・飯田・尾張と大小12もの藩が分立していた。このよう

な地勢から生じる当然の結果として、この国には言語にせよ、食生活にせよ、

人々の気性にせよ、各盆地ごとにそれぞれ異なった文化が存在するのである。

そして鉄道もまた中央東線・中央西線・信越線、飯田線といった国鉄の各線は

線区ごとに沿線の雰囲気も走る車輛も大きく異なったし、松本電鉄・長野電鉄・

上田丸子電鉄といった個性の塊のような地方私鉄が更に彩りを加えていた。