ハンドブレーキブレーカー

1958.10. 福岡市内 Photo by: T. Satomi

中島忠夫さんよりご教示頂きました。

  

 ごく当たりまへのことですが、いまの市街電車にはなくなっているもの

 に「ハンド・ブレーキ」と「ブレーカー」が挙げられますね。

 市電の運転台にかじりついてたら、運転手さんが気短にノッチを

 いっぱい入れたら、頭の上の「Circuit_Breaker」から大音響と火を吹く

 ブレーカー !! それにかならず ハンド・ブレーキ(手動制御器)の装備を

 義務づけられていて、大車輪のハンドルと足元に ラッチがついて

 いたのがなつかしいですね。

  

幼い頃、阪急電車や大阪市電の運転士のすぐ後ろに立っていて、ふと目に

とまる丸いハンドルが不思議で仕方ありませんでした。あれは何のための

ハンドルだろう?

電車は線路の上を走るのだから自動車のようなハンドル(英語ではSteering

Wheel)は必要ないはず。きっとポイントを渡る時にあれを回して方向を選ぶ

のに違いない。じっと目を凝らしてポイントを渡る瞬間を観察しましたが運転

士はハンドルに手を触れようともしない。ついにあの不思議なハンドルが

回されるのを目にすることはなかったのでした。

そうなると好奇心旺盛な幼児としては気になって気になって仕方がない。

思いあまって傍にいた父親に尋ねました。

「あれを回すとどうなるの?」

父親が顔を上げて面倒臭げに答えました。「電車が止まるんだよ」

電車の世界では「ブレーカー」が死語になってしまいましたが、一般の家庭

では「ブレーカー」が「ヒューズ」に取って替わって「ヒューズ」の方が死語に

なりましたね。

思えば台風が近づいてきて家族が見守る中、家の窓や雨戸に板を打ちつけ

る時と、「ヒューズ」が飛んでしまった時にだけ、一家の父親はその尊厳を

保っていたのでありました。

画像はハンド・ブレーキとブレーカーを装備していたいにしえの市街電車の中

から出来るだけ古いものを選びました。

西鉄福岡市内線の101形は1911年(明治44年)より北九州線の1形として

川崎造船所にて製造された木造高床式でダブルルーフの格調高いボディと

ブリル製の大きな台車が特徴でした。(里見)