白線

1963.4. 天王寺駅 Photo by: T. Satomi

幼い頃、電車ごっこをして遊ぶ際には必ず誰かが駅員の役を演じ、

「はい、電車が入ります。危ないですから白線の後ろに下がってお待ち

下さい」と構内アナウンスの口まねをした。

白線というのはプラットホームのいる乗客の待機線のことであり、実際には

破線であり、白いペンキで描かれているか、あるいは白いプレートがホーム

に埋め込まれていた。

何時の頃からか正確には思い出せないが、目の不自由な人の歩行用に

突起のついた黄色いラインが白線の内側に引かれるようになった。この

ラインはあくまで目の不自由な人のためのものであったはずだが、引いて

みるとこちらの方がはるかに目立つためか、いつしか列車到着時の待機線

としてはこちらが主役を演じるようになってきた。

駅のアナウンスも「白線」から「黄色い線」に変わった。もっとも過渡期には

「黄色い白線の内側にお下がり下さい」というアナウンスもあったりして、

こみ上げる可笑しさを押し殺したりしたこともあった。

ただ不思議なのは黄色い線が白線になり替わったのであれば、白線は無用

だから消してしまえばいいと思うのだが、相変わらず白線も並行して残って

いる駅が多い。私が利用する常磐線柏駅についていえば、下りホームは

白線がなく黄色い線だけになっているが、上りホームは白線も残っている。

基準線が2本あるというのは、一般的にいってあまり麗しいことではない。