鉄製有蓋車

1974.1. 浜田駅 Photo by: J. Satomi
貨車の形式記号は鉄道車輌の中では最も多彩で楽しめる。
それらを大別すると、まず車体形状もしくは構造を表すものとして「ワ」有蓋車、
「タ」タンク車、「ト」無蓋車、「レ」冷蔵車、「ツ」通風車等があり、次に何を
積むかを表すものとして「ク」車運車、「カ」家畜車、「ナ」活魚車、「ポ」陶器車、
「セ」石炭車、「チ」長物車、「シ」大物車等が挙げられる。
以上は営業用貨車の例だが、事業用貨車の場合は、「ヨ」車掌車、「キ」雪
かき車、「ソ」操重車のように役割を表すものが多い。
そして唯一の例として何で作られているか、すなわち車体の材質を表した
記号が鉄製有蓋車の「テ」である。
しかしわざわざ鉄製と断らなくても、戦後の有蓋車はワラ1形にせよワム
80000形にせよすべて鉄製ではないか、という疑問がわいてくる。
実は「鉄製」は車体の外側ではなく内側のことを指しているのである。
通常の有蓋車の内側は木製の羽目板張りになっているが、鉄製有蓋車の
場合は、側面も床も天井もすべて鋼板張りになっている。鋼板張りにする
理由は雨漏りを防ぐのと、発火を防ぐためである。従って鉄製有蓋車はその
構造上は、「防水車」ないしは「防火車」と呼んだ方がわかりやすい。
では鉄製有蓋車はどんな貨物を積むのか。水に濡らしてはいけない、そして
発火に注意しなければならない物質、それは生石灰である。
生石灰とは酸化カルシウムCaOで組成される物質で、水に濡れると多量の
熱を発生して水酸化カルシウムを形成するので非常に危険なのだ。
従って積荷の種類という意味では、「生石灰車」と呼ぶこともできる。
鉄製有蓋車は、ご覧のように柱をすべて外側に出し、車体は全面的に溶接
構造を採用、側板・妻板・天井・床・扉は二重構造で中間には熱の不良導体
であるコルク板とアルミ箔が入れられ、扉の合わせ目にはゴム・フェルト等を
貼った完全防水・防火車だった。
上の写真のテラ1形は1964年(昭和38年)に製造が開始された近代的なタイプ
の17t積鉄製有蓋車。そもそも鉄製有蓋車自体の輌数が相対的に少なく、
これを見つけるのにはかなり骨が折れた。

