びわこ号

1959.3. 浜大津駅 Photo by: T. Satomi

関西私鉄界が生んだ大スター「びわこ号」

琵琶湖は昔から大阪人が気軽に訪問できる大行楽地のひとつであり、琵琶

湖遊覧客のための専用列車を走らせることが、早くから京阪電鉄にとっての

宿願であった。

そして1931年(昭和9年) 4月、大阪の天満橋から琵琶湖の玄関口である浜大

津間までの58.8kmを72分で結ぶ、その名もズバリ「びわこ号」が華々しく

登場した。

びわこ号専用車として日本車輌で3輌が製造された60形は、日本最初の

連接構造車であり、一見2輌編成に見えるがセットで1輌とみなされる。

その特徴は連接車体だけでなく、電車として初めて本格的な流線形を採用

したこと、また専用軌道と併用軌道の両区間を直通で走るため集電用の

ポールとパンタグラフを装備し、更にそれぞれ専用の乗降扉を設置する徹底

ぶりだった。

しかし他の多くの行楽用鉄道車輌(リゾート・トレイン)が辿った運命と同様

に、後に起こった太平洋戦争のために琵琶湖直通運転は中止され、60形

はしばらく天満橋−守口間の区間運転などに使用された。戦後も京阪本線

の列車単位の増加によって60形は大津線のみの運用となり、それも極めて

特殊な車体構造が災いして、1960年代になると早々と定期運用から外れて

いった。

関西が生んだ大スターでありながら、その走る姿は関西のファンでも滅多に

お目にかかるチャンスがなかった幻の名車である。