給砂塔

1974.3. 旭川機関区 Photo by: J. Satomi

最近の鉄道模型ではNゲージにせよHOゲージにせよ、ストラクチャの

品揃えが充実してきて、駅舎や信号のような鉄道関連施設はもちろん

オート三輪車や漁船、神社の鳥居といった直接鉄道に関係ないものまで

製品化されているので、とても楽しい。鉄道模型趣味の幅の広さと奥の

深さを改めて実感する次第である。

機関区施設にしても色々発売されているのだが、給砂塔だけはまだお目

にかかったことがない。機関区といえば扇形庫やターンテーブル、給炭台

に給水タンクまではすぐ思い浮かぶのだが、給砂塔まではちょっと、という

ことかもしれない。

しかし給砂塔は機関区には必ず存在した。

そもそも鉄道の車輪とレールとの関係を考えてみると、自動車のように

ギザギザの滑り止めがついたゴムのタイヤとザラザラのアスファルト

道路面との関係とは異なり、硬くてツルンとした鋼鉄製の車輪とレール

との接触によって鉄道車輌が全く滑ることなく走れるというのはちょっと

不思議な気がする。この疑問は鉄道黎明期の専門家達も持っていた

ようで、当初はやはりギザギザのついたレールとか色々考えられたが、

案ずるより生むがやすしで、重量の重い鉄道車輌の車輪とレール面との

間には、たとえ鋼鉄同志の接触でも、意外に大きな粘着力が得られる

ことがわかった。これがわかった時点で現在の鉄道の基本形態が確立

されたといっても過言ではない。

但し、これは線路が平坦でかつ乾いている場合の話である。

線路が急勾配であったり雨が降ったりすると、この粘着力は大きく失われ、

とたんに車輪は空転(スリップ)し始める。

これを防ぐために機関車はレールに砂を撒く。原始的なようだが、砂を

撒くことで一時的に線路上をちょうど紙ヤスリのような状態にするわけ

だから効果は絶大である。従って機関車は必ず砂を撒くための装置と

砂を貯めておく砂箱とを装備している。

電気機関車の場合は軸箱のすぐ隣に砂箱が設置されているので、容易

に砂の補給を行えるが、蒸気機関車の場合は大抵ボイラーの上に砂箱

が設置されているので、高い位置から補給してやらなければならない。

このために蒸気機関車の機関区内には上の写真のような給砂塔が設け

られていた。やじろべえのように左右に伸びた長い足が給砂管で、下の

写真はちょうどD51に砂を補給しているところである。

機関車1輌の砂の消費量は一日平均50リットルの砂を消費したという

から、50輌配置の機関区では一日に2キロリットル以上の砂を準備しな

ければならなかったことになる。

しかし勾配路線を走る機関車にとっては命の砂であり、当時の蒸気機関

車の機関士の述懐によれば、特に雨天の日などは砂を撒きながら、まさ

に砂を噛む思いで勾配を登っていった由である。

1974.3. 旭川機関区 Photo by: J. Satomi