


C58はD51の小型版であると紹介されることが多いが、それは両機の設計時期が近いために、必然的に各装置の形状や全体的な雰囲気が似ているということであって、その開発コンセプトは全く異なっており、C58が「ミニD51」であるということは断じてない。またC58はしばしば「均整のとれた万能機」と賞される。「万能機」についてはあえて否定はしないが、「均整のとれた」という形容詞には異論がある。C58には形態的に見て、著しくバランスを崩しているところが少なくとも1箇所あるからである。よく足廻りを観察して頂けばお気づきだと思うのだが、C58の主連棒(メイン・ロッド)は異常に短い。主連棒はボイラーで発生したエネルギーをビストンが往復運動に変換し、その運動を回転運動に変換して連結棒(サイド・ロッド)に伝達する、人間でいえば大腿部にあたる極めて重要な装置であり、つまりC58は太ももがかなり短いアスリートということになる。従ってその走る姿はおよそ「力強さ」とはかけ離れた、ちょこまかと不安定な印象を与えるのである。機関車の台枠全長に対する主連棒の長さの比率を見ると、第2先輪を持つC57は約1:0.25であるのに対して、C58は約1:0.2で20%も短いことになる。4軸駆動で第3動輪に主連棒がかかるD51の場合は約1:0.27と長く、車軸配置が似ているC56ですら約1:0.24であり、C58の短さは他に例を見ない。主連棒の短さは走行に不安定さを生じさせる。それは特に高速走行時に横揺れという形になって顕れた。紀勢本線で準急列車を制限速度いっぱいで牽引したC58の場合は、半径250mの急曲線では脱線するのではないかというほどの動揺を感じたと報告されている。そもそもテンダー機で1C1というのが不思議な軸配置ではある。高速性能を優先するなら2Cか2C1にすべきだし、牽引力を優先するなら1Dか1D1、すなわち真の「ミニD51」を設計すればよかったはずだ。それを両立させ、「丙線区における高性能機関車」をめざした時点でC58という機関車の宿命は定まった。丙線区で使用するためには機関車全長は短くなくてはならない。しかし高出力を得るために広火室を採用すれば従輪が必要となり、一方で先輪とシリンダーブロックは絶対必要だから、残った狭いスペースに3つの動輪が配置されることになり、すなわち主連棒の長さは単純な引き算で必然的に決まってしまうのである。意地の悪いいい方をすると、C58は高速安定性という1点を除けば「万能機関車」だった。しかし高速性能を無視するなら、そもそも1,520mmという大直径動輪を持つC型機である必要がなかったのではないか、と論点が堂々巡りし始める。ただ同機にとって幸いだったのは、国鉄内部で高速安定性が問題になっていた頃、キハ55系の登場で地方の優等列車は続々と気動車化され始め、C58の主任務は普通列車や低速軽量な貨物列車の牽引に限定されるようになり、「客貨両用の万能機関車」という名誉を汚されることなく生涯を終えたことであった。ちなみに私が大昔に初めて製作した真鍮製HOのC58も横揺れが激しかった。本物と模型では動力伝達の方向が逆だから、単なる偶然に過ぎないかもしれないが、その後私が目にしたC58の模型は、ゲージを問わずやはり横揺れが目立つものが多かった気がする。 |