

静岡県で最も美麗な電車だったというと言い過ぎだろうか。遠州鉄道の前身である遠州軌道が1923年(大正12年)の改軌・電化に際して一流車輌メーカーである日本車輌に発注したホ1形5輌は、12m級の鄙には稀な最新鋭の電車だった。車体は木造ながら、まだダブルルーフ・正面5枚窓がデザインの主流だった時代に、シングルルーフ・正面3枚窓を採用し、何よりも乗降扉の上部は楕円形に縁取られ、その窓も平行して楕円にカットされているのが美しい。戦後はモハ1形のモハ1〜5に改番、戸袋窓が普通の四角い窓ガラス改められてしまったが、原形ではこれも楕円形でカットグラスがはめ込まれていたようである。台車は枕バリが複雑な形態を持ったブリル社製MCB2型をはき、定格出力100kw/hのTDK501A型電動機2機を装備した。この写真の撮影時にはすでに第一線を退いて西ヶ崎車庫内の入換作業に余生を送っていたが、大正時代のダンディズムを臭わせる遠州随一の名車である。 |