

1960.5. 桜木町駅前 Photo by: T. Satomi
電車に限らず自動車も船舶も航空機も、世の中の乗り物はその誕生以来
ひたすらに軽量化をめざしてきた。ご説明するまでもなく重量が軽い方が
積載量が増え、性能面でも有利になるし、最大のメリットは相対的に燃費が
よくなるからである。従って乗り物を設計・製造する立場の人間にとっては
軽量化は「絶対正義」とみなされてきた。
しかし見方を変えて重量が「重い」ことに何のメリットもないかというと、そうでも
なく、乗り物同士が衝突した時は重量の重い方が必ず勝つ。よく自動車の正面
衝突の写真などで、一方の車が滅茶苦茶に大破して、もう一方はほとんど無傷
というのを目にするが、無傷なのは大抵、図体が大きく重い方の車である。
もうひとつのメリットは、重量が重い乗り物の方が圧倒的に「乗り心地」がいい
ことである。電車や自動車の場合は路面からの振動、船舶の場合は波浪の
影響、航空機の場合は乱気流の影響を比較的受けなくてすむ。もちろん設計・
製造する側も最新技術を駆使して、軽量化と乗り心地の向上とを両立させようと
努力するが、根本的に「重い」乗り物の乗り心地にはかなわない。
逆に言えば「省エネ」「地球環境保全」「路面への影響」といったことをまったく
配慮せず、自分のことしか考えない利己主義に徹するならば、安全性と快適性
の面で「重い」乗り物の方がいいということになる。
上の横浜市電1000形は、1928年(昭和3年)に20輌が製造された戦前の横浜
市電を代表する電車である。この電車の特徴はとにかく「重い」ことにあった。
全長13.4mで自重は17.2tもある。それに対して電動機は定格主力37KWの
ものが2個装備されているだけなので、走行性能は横浜市電中最低であった。
あまりにもスピードが出ないので焦れた運転手がよくブレーカーを飛ばして
しまったという。ところが乗り心地の面では、多くの横浜市民の乗車体験者や
市電マニアが「1000形の乗り心地は格段によかった」と述懐している。振り幅
が大きなローリングがとても心地よかったというのである。しかし所詮、一般
道路上を走る市電にとって加速・減速性能が悪いというのは致命的であった。
この鈍重なる名車は蒲田車輌と、幻の名門車輌メーカとなった雨宮製作所にて
10輌ずつが製造された。
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