−京阪電鉄発行「京阪ニュース」1960年12月号より抜粋−
先日、京阪が誇るスーパーカー2000形に乗っていると高校生が、
「この電車、お客さんをぎゅうぎゅう詰め込むから真ん中ふくれてしまい
よった」と云っていました。
勿論初めから車体をふくらませて造ったのですが、竹が強いのと同じで、
従来より薄い鋼板で強度が保てる為、一層軽い車が造れるようになったの
です。従って振動は減り、加速減速も高くなるという、いわば現代工業技術
の進歩が、あのふくらみに象徴されているのでしょう。
この電車が出来る迄は、特急の1800形にテレビを積込んで、重役さんや
車両部さんは一生懸命乗客の御機嫌をとっていました。近鉄は二階電車を
走らせる、小田急はSE車なる、すさまじい流線形を真赤に塗って乗客の
度肝を抜いたものです。
電鉄会社も大変なもの。更にその前は、戦後の車両不足を補うのに四苦
八苦、何とかして手に入れたのが、各社共通形の私鉄標準車という愛想の
ない電車。京阪では1300、1600形等。さすがに運輸省から63形の配給
だけは受けずに、私達私鉄マニアをほっとさせてくれました。
こうしてみると電車も、その生れた時代をよく物語っており、そこに又各社
各様の趣向があってマニア達の話題はつきません。
先に記しました特急新車群から私は京阪の1800形に深い親しみを持って
おります。
国鉄モードを真似て正面二枚窓の流線形(湘南形)に浮身をやつしたり、
扉を両端に寄せてしまったり(これも湘南形や客車の真似で東京私鉄の
やりたがる手)せず、どちらかといえば地味な形で、それでいて、私鉄の
トップを切って空気バネ台車を使い乗り心地を配慮する点など。又どこやら
さんの様に特急料金をとらずに庶民を乗せてくれる1800形。
80糎巾の窓が扉間に10枚並んでいる為、国電窓のようないらだたしさも
なく、幕板部分がすっきりして、屋根が浅い為、軽快でスピード感があり
ます。車内は申す迄もなくロマンス・シート、それが又国鉄一等車のように
貧乏人を見くびった感じもないのです。こんな素晴らしい電車を京阪は今後
も造ってくれる事でしょう。マニア達は楽しみにしています。
里見太郎(朝日放送音楽担当プロデューサー)
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