

同和鉱業小坂鉄道は知られざる私鉄であった。私自身も正直言ってこの鉄道を訪れたのは、東北地方の全私鉄を訪問するという目的があったから立ち寄ったのであって、仮に小坂鉄道だけが遠く離れた場所にあったとしたら、ここだけを目的に旅立ったとは思えない。当時は小坂鉄道を紹介する資料もほとんどなかった。しかし時刻表の路線図に線路のマークがあることは、同和鉱業という会社が旅客営業を行っている立派な「私鉄」であることを意味した。実際に小坂鉄道を訪問すると、私はこの鉄道会社の魅力に圧倒された。他の地方私鉄には見られない非常に立派な気動車が70km/h以上のスピードで田園地帯を走り抜けていく。花岡駅では冒頭からDB2というまったく正体のわからない機関車に出くわした。構内にごろごろころがっている貨車群の大部分が珍しいものか、歴史的価値のあるものばかりだった。その小坂鉄道は花岡線が廃線になり、小坂線も旅客営業を廃止、時刻表から完全にその姿を消した。知られざる私鉄、小坂鉄道は何10年かの歳月を経て、再び知られざる世界へ戻っていくのであろう。 |